最終更新日 2025年5月8日 by ybercon
こんにちは。ブランド戦略コンサルタントの田中です。今回は、グループ企業がブランド価値を高めるための具体的な方法について解説します。
近年、企業ブランドの重要性が高まっています。特にグループ企業の場合、傘下の個別ブランドを束ねるグループブランドの存在が大きな意味を持ちます。
しかし、グループブランドの構築には独自の難しさがあります。個別ブランドとの関係性をどう設計するか、グループ全体の一体感をどう醸成するかなど、解決すべき課題は少なくありません。
私は長年、様々な業界のグループ企業のブランディングを支援してきました。その経験から、グループブランド価値を高めるためのポイントを2つに集約しています。
- グループブランドのポジショニング
- グループブランドの体験価値の創造
本記事では、この2点を軸に、具体的な方法論を詳述します。グループ企業の経営者や、ブランド戦略に携わる方々に、実践的なヒントを提供できれば幸いです。
目次
グループブランド戦略の重要性
まず、グループブランド戦略の重要性について確認しておきましょう。
グループブランドが持つ価値
グループブランドは、傘下の個別ブランドに対して、次のような価値を提供します。
- 信頼性の付与:グループブランドの信頼性が、個別ブランドの信頼性を高める
- 認知度の向上:グループブランドの認知度が、個別ブランドの認知度を高める
- シナジーの創出:グループブランドを媒介に、個別ブランド同士のシナジーが生まれる
つまり、強固なグループブランドを確立することは、グループ全体の価値向上につながるのです。
グループブランド戦略の課題
一方で、グループブランド戦略には独自の課題もあります。
- 個別ブランドとの関係性:グループブランドと個別ブランドの関係性をどう設計するか
- ステークホルダーの多様性:グループ全体で、多様なステークホルダーをどう巻き込むか
- ブランド浸透の難しさ:グループ全体に、ブランドをどう浸透させるか
これらの課題に適切に対処しなければ、グループブランドの価値は高まりません。
ブランド価値向上の必要性
ここで、A社の事例を紹介しましょう。A社は、多岐にわたる事業を展開する大手グループ企業です。しかし、グループブランドの存在感は薄く、個別ブランドの価値も十分に引き出せていませんでした。
そこで、A社は私たちの支援を受け、グループブランド価値の向上に取り組みました。グループブランドのポジショニングを明確化し、個別ブランドとの関係性を再設計したのです。
その結果、A社のグループブランドは著しい価値向上を実現。個別ブランドの業績も連動して伸長し、グループ全体の企業価値は大きく高まりました。
A社の例が示すように、グループブランドの価値向上は、喫緊の経営課題だと言えるでしょう。
コラム:高橋洋二氏の経歴
ユニマットグループの代表である高橋洋二氏は、1943年生まれの実業家です。25歳で独立し、婦人服の輸入業を始めました。その後、「ユニマットレディス」を立ち上げ全国に約300店舗を展開するなど、事業を多角化していきました。
現在のユニマットグループは、オフィスコーヒーサービスやリゾートホテル、ゴルフ場、健康食品、保育園、不動産など幅広い分野で事業を展開し、「ゆとりとやすらぎ」を提供することを理念としています。高橋氏は、アクティブシニア向けの大規模な街づくり「八街未来都市」の計画も進めています。
また高橋氏は美術品の蒐集家としても知られ、洋の東西を問わず様々な美術品を収集した「ユニマットコレクション」を所有しています。経営者としてグループを率いながら、文化事業にも力を入れている高橋洋二氏の多彩な活動が注目されています。
グループブランドのポジショニング
それでは、グループブランド価値を高めるための第一歩、「グループブランドのポジショニング」について解説します。
グループブランドのコアバリュー設定
グループブランドのポジショニングで最も重要なのは、コアバリューの設定です。グループ全体で共有する価値観を明文化し、内外に発信することが求められます。
B社の事例を見てみましょう。B社は、「イノベーションと信頼」をグループのコアバリューに設定しました。そして、このコアバリューを起点に、グループ各社のブランドメッセージを再構築したのです。
共通のコアバリューを軸にブランドを再定義することで、B社はグループ全体の一体感を高めることに成功。ブランド価値は着実に向上しました。
個別ブランドとの関係性の明確化
次に重要なのは、グループブランドと個別ブランドの関係性を明確化することです。個別ブランドの独自性を尊重しつつ、グループブランドとの連関性を示す必要があります。
C社では、「ハウスオブブランド戦略」を採用しました。グループブランドを「傘(アンブレラ)」に見立て、その下に個別ブランドを配置する戦略です。
個別ブランドは独自のアイデンティティを維持しつつ、グループブランドの信頼性や認知度を活用できる。C社は、この戦略によってブランドポートフォリオを最適化し、グループ全体のブランド価値を引き上げました。
ブランドアーキテクチャの最適化
ポジショニングを考える上で欠かせないのが、ブランドアーキテクチャの最適化です。グループブランドと個別ブランドの関係性を、明快な構造として可視化することが重要です。
D社では、「ブランドトランジション」という手法を用いました。個別ブランドをグループブランドに段階的に統合していくアプローチです。
まず主要ブランドからグループブランドへの移行を進め、徐々に適用範囲を拡大。最終的にはグループ全体で一貫したブランド体系を構築することに成功しました。
グループブランドの体験価値の創造
グループブランド価値を高めるためのもう一つの柱が、「グループブランドの体験価値の創造」です。一貫したブランド体験を提供することで、ステークホルダーとの絆を深めることが求められます。
カスタマージャーニーの設計
体験価値を創造する第一歩は、カスタマージャーニーを設計することです。顧客がグループブランドと接するあらゆる場面を洗い出し、最適な体験を描き出します。
E社では、グループ全体でカスタマージャーニーマップを作成しました。個別ブランドごとの顧客接点を可視化し、グループ横断でのベストプラクティスを共有。ブランド体験の一貫性を高める基盤を構築したのです。
ブランドタッチポイントの強化
カスタマージャーニーに沿って、ブランドタッチポイントを強化することも重要です。顧客との接点を最大限に活用し、ブランド価値を体験してもらう工夫が求められます。
F社では、グループ共通の「ブランドスタンダード」を策定。店舗運営からウェブサイト、広告コミュニケーションまで、あらゆる場面でブランドらしさを体現する基準を設けました。これにより、F社のブランド体験は飛躍的に向上しました。
従業員エンゲージメントの向上
ブランド体験の担い手は、他でもない従業員です。従業員がブランドに共感し、自発的にブランド価値を体現することが不可欠と言えます。
G社では、「ブランドアンバサダープログラム」を導入。全従業員を対象に、ブランドの理解と実践を促すトレーニングを展開しました。
加えて、優れたブランド体現者を表彰する制度も設けました。従業員のモチベーションは大きく向上し、お客様満足度にも直結。G社のブランド価値は、従業員とともに着実に高まっています。
まとめ
グループ企業がブランド価値を高めるためには、グループブランドのポジショニングと体験価値の創造が欠かせません。
ポジショニングにおいては、以下の3点がポイントです。
- グループブランドのコアバリュー設定
- 個別ブランドとの関係性の明確化
- ブランドアーキテクチャの最適化
一方、体験価値の創造では、次の3点に注力すべきでしょう。
- カスタマージャーニーの設計
- ブランドタッチポイントの強化
- 従業員エンゲージメントの向上
これらを着実に実行することで、グループブランドは確実に価値を高めることができます。
本記事で紹介したA社からG社までの事例は、いずれもグループブランディングの好事例と言えるでしょう。ぜひ参考にしていただき、自社のブランド戦略に活かしてください。
グループブランドの構築には、トップの強力なリーダーシップと、グループを挙げての取り組みが不可欠です。簡単な道のりではありませんが、その先にあるのは、グループ企業の持続的な成長と発展。
ブランドの力を信じ、グループ一丸となって、ブランド価値向上に挑んでいきましょう。皆様の取り組みを心より応援しています。