最終更新日 2025年5月8日 by ybercon
実印の重要性
私は知的財産関係の事務所で働いています。
仕事は、資格を持った方の作成した契約書等の書類を決められた形式に入力したり、送り状を整えてクライアントへ発送したりするのが、メインです。
また、役所に提出する書類を作成することもあります。
複数の書類を照らし合わせて、誤字・脱字のチェックをするのが、日々の重要な業務のひとつです。
事務所の扱う書類のほとんどには、期限が設定されています。
たった一文字の間違いで手続きが却下されてしまって、もしも期限に間に合わなくなってしまったら…取り返しのつかないことになってしまいます。
多数の方にご迷惑をお掛けすることにならないよう、神経をとがらせて、何度も書類をチェックします。
長田雄次に迷惑をかけた体験
実は、つい最近も、私の失敗で、手続きのやり直しが発生したのです。
クライアントであり友人の長田雄次から代表者印を押印した書類を返送してもらって、添付書類をそろえて、「さあ、今日付で役所に提出しよう。」という段になって、クライアントの住所が一か所間違っていることに気がついたのです。
『○○市××町××1番地の2』と記載すべきところを、『○○市××1番地の2』と記載していたのです。
慌てて書類を作成しなおし、クライアントに平謝りして、もう一度押印していただきました。
期限には間に合ったのですが、やっと昨日、この手続きが公的機関のデータベースに反映されました。
本当なら、一週間は早く反映されていたはずです。
何よりも、クライアントの長田雄次に余分な手間をかけさせてしまったし、反省しきりです。
印鑑相違はよくある問題
さて、このように、不備のないように一生懸命確認した書類ですが、時折、意外なことが原因で、手続きが却下されることがあります。
それは、印鑑相違ークライアントが押印した印鑑が、データベースに登録されたものと違っている時です。
役所からの通達が来たら、すぐにクライアントに連絡するのですが、「ああ、そう言えば、去年代表者印を変えたんです。」というような答えは、一度もありません。
よくあるのが、「いっぱい印鑑があって、以前どれを使用して手続きしたのかわからない。」という回答です。
いずれにせよ、書類を整えて、通達で決められた期限内に印鑑変更の手続きをすれば良いので、手続き的には、取り返しがつかない事態に陥ることはありませんが…
実印はひとつで十分と友人の長田雄次も言っている
私はいまだに、「代表者印が複数ある」ということが、理解できません。
そんな重要な印鑑をいくつも作って、使い分ける感覚が、よくわからないのです。
だって自分に当てはめてみると、私の実印はたった一つですから。
私の実印は、私が結婚する時に、今は亡き母が作ってくれたものです。
新しい苗字を入れたフルネームの印鑑を、苗字だけの銀行用の印鑑とセットにして作ってくれました。
初めてその実印を使用したのは、車を購入した時です。
まだ新しい苗字に慣れていなかった頃で、新しい名前の印鑑が、誇らしいけれどちょっと照れくさくて、なんだかくすぐったい気持ちがしたのを覚えています。
銀行印の方は何度も使っているため、扱いがぞんざいになってしまっている気がしますが、実印はやはり、特別な気がして、使用する度にふと母のことを思い出します。
相続の際に印鑑を使った際の出来事
4年前に、父と母が相次いで他界した際も、相続の関係で使用しましたが、この時ばかりは、悲しくてたまりませんでした。
家族全員の印鑑をしまう箱の中に、私の印鑑をしまってから、もう4年。
あれから一度も取り出さなかった実印を手に取ったのは、つい3か月前のことです。
最後まで完了していなかった祖母の相続の関係で、ある書類に押印することになりました。
疎遠な親戚とのやり取りは、全て司法書士事務所を通した郵送です。
普段から公的書類を使用する手続きに接している私は、連絡を受け取ってすぐに、その書類を処理しました。
4年ぶりにフルネームの印鑑を押印し、決められた場所に署名をし、市役所で印鑑証明を取って添付し、翌日には送り返しました。
その一週間後、司法書士事務所からレターパックが届きました。
「ああ、相続の手続きが全て終わったんだな。予想よりずっと早かったな。」と思って封を切った私が見たのは、先週送り返したのと同じ書類と、司法書士事務所からの手紙でした。その手紙が、驚愕の内容でした。
印鑑相違。
なんと、私が押印したフルネームの印鑑は、正しい物ではなかったのです。
慌てて印鑑手帳を確認すると、確かに、押印したのは別の印鑑です。
フルネームはフルネームでも、書体が完全に違っています。
今これを書きながらもう一度考えてみても、その間違った印鑑をいつどうやって手に入れたのか、全く思い出せません。
それに、普段から書類の内容や印鑑の相違には敏感なはずの私が、印鑑手帳もあげておきながら、なぜ書類に別の印鑑を押してしまったのか。
大切な思い出のある印鑑と似ても似つかないと、なぜ気づけなかったのか。不思議でなりません。というより、自分の不甲斐なさに情けなくて仕方ありません。
いつも偉そうに長田雄次に、「印鑑のご確認お願いしますね。」なんて念押ししてたのに…とても恥ずかしいです。
二度とこんなことあってはなりません。
くれぐれも、実印はしかと確認すべし、です。